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寺社建築文化財の探訪<TIAS>

寺社建築の起源と変遷、文化財の諸問題を探訪しています。 又文化財拝観資料も記載しています。
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カテゴリー  [ 1-3 陰翳礼讃の現代人 ]

日本人の不思議な感性を探訪

1-3 陰翳礼讃の現代人

 

1-3

 陰翳礼讃の現代人        明るさを得たことによって失った美の領域

 

 

  原状復原・現状復元

 

 

 桂離宮と日光東照宮とではどちらが好きですか?・・大半の人が桂離宮に軍配を上げます。

 しかし同じ人が、西欧観光に行きゴシック建築の大聖堂、ガゥディーのサクラダファミリア
 教会を見て感
嘆し、賛辞を送っているのも通常です。

 
 ブログ桂離宮全景20141024

 日本人は、日本の文化財に対し「陰影礼賛」的な感性があるのです。

 金箔の剥げた仏像、朱塗りが剥げ素地の木材、新しいものより古いことを「美」とする・・・
 仏像を修復するとき、全身金箔を貼りなおす「原状復原」をしません、「現状復元」です。

 

1975年、斑鳩の法起寺の三重塔を解体修理した時、創建時は朱塗りの確証があり「原状復原」
 をしようと有名な建築史学の先生
は、創建時の朱塗りにしようとしたら周囲から猛反対を受け、
 わざわざ新しい木材に古色仕上げを施し「現状風復元」にしまし
た・・・・・

 

 しかし、文化財でない近年再建新築された薬師寺東塔は、原状復原され朱塗りで輝いています。

 2016年解体改修されている西塔は、2020年解体修理が終わり5月に落慶法要の予定です。
 外観が果たしてどうなるのか期待していましたが、「現状復元」の修理前の外観のままです。
 東西両塔、同じ朱塗りが並び立つのが見たかった、・・・・? どちらが良いのか?


 このような例は、多数あり「文化財保存修理」における永遠の課題です。

 この感性は「木の文化」の歴史に起因するのかもしれませんが、日本人特有です。



 

 a15東照宮日光詳細20140725

                日光 東照宮 陽明門


 

 2 華美と簡素  東照宮の例

 

1、「東照宮」の美術的価値は高い?・・・永年の論議


  江戸時代の寺社建築の障壁画や欄間の透し彫は,本来の桃山美術の持つ潑剌とした感覚が
  薄れ,代わって格式張った荘重、華美なデザイン、雰囲気が強調されています。

  故に、桃山文化では無く「寛永文化」として位
置づけられています。東照宮はこの代表です。

 桃山美術の発展の最後の段階が見られる寛永文化の装飾彫刻の寺社建築は、枯山水、茶室、
  桂離宮など
の発展と異なる発展です。

  ルネッサンスの無い日本、華美で金銭に糸目をつけない建築、彫刻、装飾、
彩色は平安、
  鎌倉時代から600年以上続いてきた、寺社建築の文化財的、美術的終焉といえます。


  ●明治23年 岡倉天心  東京美術学校の授業で

    「日光廟の如き錯雑華美に失し、全体として完備のものというべからず」  

 

  ●明治30年 塚本靖   日光廟建築装飾概論

    「この建築就いてどうも装飾の仕様が宜しくない・・曲線の濫用・・・」

 

  ●明治40年 伊東忠太 「晃廟建築の美を論ず」を発表

    「東照宮は多くの欠点を有し、様式は明式の濫用に過ぎない」と批判しているが
    逆に「本邦無二の
国宝と認むるに於いて、素より亳も不可なるを見ず」

    と意匠の豊富さ、技巧の精緻さ、彫刻の巧みさ、彩色の豊かさを高く評価している。

 

  ●大正3年 関野貞   「工業大辞書」

    最も完備した代表的霊廟建築であり、施工の精美さ、手法の新奇さ、意匠の豊かさは
    江戸時代初期
の工芸の集大成ではあるが「繁縟※の弊に陥りたるを惜しむ」と

         ※(はんじょく 【繁×縟】 種々様々のいろどり。「繁文縟礼(はんぶんじょくれい)」の略)

 

 このように大正年間までは、賛否両論でした。
 

  ●昭和初期 藤島亥次郎 「彫刻や彩色の亂用は建築の本質を無視して居る」

        岸田日出刀 「比例釣合の美は到底見られない」

        大岡実   「悪傾向の第一歩を明らかに示している」

        ※昭和に入ると批判側の意見が多くなります。

 

  ●初等教育  

    従来一貫して東照宮を評価していたが、徐々に変化し
   「日光に於ける天然美と壮麗なる東照宮の対
峙」という表現が、
   「日光の自然美と人工美」と云う表現に変化して大正期ではこの表現が主流となリます。

   

   東照宮に於ける壮麗とは美なのか?という疑問・・・東照宮は美しいのか?
   という問に変化していき
ました。

 

  ●昭和10年代 

   ブルーノタウトの影響

   彼が桂離宮を初めて訪れた日の約二週間後の1933年5月20日、 日光へと足を延した。

   日光の東照宮へ。木深い杉木立、 そのなかにすさまじい建築がある・・・・・

 

 

  金色の唐門、 装飾品のように『美しい』。

  建築物の配置はすべてシムメトリー、 眩ゆいばかりのきらびやかさ。

  すべてが威壓的で少しも親しみがない。第二の社殿(東照宮) ・・ いかものだ。

  神馬は厩のなかで頗るご機嫌斜めである、 
  欄間の三猿(見ざる、聞かざる、言わざる)
兵隊の列のような配置、
  なにもかも型にはまっている。
  華麗だが退屈、 眼はもう考えることができないからだ。

  鳴龍のある本地堂 手をたたくと天井に描かれた龍がクルルルと鳴く、珍奇な骨董
  品か?
 (中略) ・・配置はシムメトリー、 これを破っているところもあるが、
  しかしそれはなんの意味ももっていない。
  建築の堕落だ・・・・・・ しかもその極致である。

 

 

   彼は桂離宮については最高の賛美をおくったにもかかわらず、 一方の東照宮に関しては
   斬りさくほど
の酷評をしました。 

   自分自身で考えずに、ドイツ人建築家のブルーノ=タウトが賞賛したから桂離宮はすば
   らしいという
評価になってしまっているのではないのかという点については、東洋古代
   建築の最高権威のひとりで
ある 伊東忠太博士は、日本のある専門雑誌で、ほぼ次のよ
   うなことをいわれた、―― 
 

 

「五十年前にヨーロッパ人が日本へ来て、日光廟(東照宮)こそ日本で最も価値のある

建築物であるといえば、日本人もまたそうだというし、
今またブルーノ・タウトがやって
きて、伊勢神宮と桂離宮こそが最も貴重な建築だといえば、日本人もまたそうだと思うのである」

これはわれわれヨーロッパ人の体系的叙述を凌駕するまことに巧妙な東洋的アイ
ロニー(皮肉、反語)である。 
          

『日光東照宮の余りにも圧倒的な人々の礼賛が有る背景の中で専門家は、何を言っても

東照宮の価値は変わらないと言う、信頼感と絶望感を伴って批判したのであろう。』
  
 

          「日本建築の基礎」ブルーノ=タウト『日本美の再発見〔増補改訳版〕』(岩浪新書)

  

  このように、東照宮は賛否両論が永年繰り返され、評価が定まっていないと言えます。

 

『陰翳礼讃』の感性、思考は、専門家の人たちにも存在しており、日光東照宮の如き華美
  な装飾には、
批判的であったといえます。
  新材に「古色仕上げ」までをする文化財修復が行われているのも事実だし 未だに文化財
  修復の方法で
文化財ごとに「現状復元?原状復原?」か論議されており、文化財のグロー
  バルな文化財の価値に疑問
を呈する事例も、多々発生しているのが現状です。

 

そのくらい日本人は、曖昧が好きなのです。         

結論を出さない、周りを気にする、そして外人に弱い!


 

 3 曖昧な感性と受動的な思考 ・・・・・これが日本人

 

 日本人の建築に対する感性は、西洋人が理解に苦しむ 自然との共生、曖昧でいながら計算
 高い設計と伝
承を1000年以上継承きたわけです。

 

 寺社建築参拝の折、この日本人の感性を「再燃」させて建築を観ていただくことが、現在の
 西洋化された日常
の環境と異なる次元に、自分をおく良い機会創造だと思います。 

 

    曖昧な感性と受動的な思考 ・・・・・これが日本人

    論理的な感性と能動的な思考・・・・・これが西洋人

 このような観点で、古建築の文化財を探訪すると・・・・・
 
 現代の日本人にも根底に流れている感性が蘇り、改革と維持保全が混在していることを良し
 とせず
整理し重点思考する機会になればと考えます。

                    一度、谷崎潤一郎の本は読んでおきましょう!

              a8岩手黒石寺ー1   8-6-1 円教寺無量壽院-1 20150622       
          黒石寺                 無量壽院      
  
  朱塗りの剥げた建築、金箔のなくなった仏像、磨耗した石仏を愛で、退色しない庭園を
  愛でる
現代人の矛盾。

                   日本人の不思議な感性を探訪してみました。
  

    

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masatias

Author:masatias
30年続く寺社めぐりのメンバーです
<TIAS>グループ名称
Improvement of a spirit boundary
by Temple and shrine =<TIAS>

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