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寺社建築と文化財の探訪<TIAS>

寺社建築の起源、歴史、文化財の紹介と文化財の問題点を探訪しています。 常時更新中です!
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カテゴリー  [ 6-2 指定基準の具体的検討 ]

指定基準の具体的理由の整理

6-2 指定基準の具体的検討


 

6-2

 指定基準の具体的検討・・・・・指定理由の明確化

 

 

 

 

国宝・重要文化財指定基準

  昭和二十六年 文化財保護委員会告示第二号

   (国宝及び重要文化財指定基準並びに特別史跡名勝天然記念物及び史跡名勝天然記念物指定基準)

 ・建造物の部

重要文化財、次の各号の一に該当し、

   (一) 意匠的に優秀なもの

   (二) 技術的に優秀なもの

   (三) 歴史的価値の高いもの

   (四) 学術的価値の高いもの

   (五) 流派的又は地方的特色において顕著なもの

   かつ、各時代又は類型の典型となるもの

国宝、重要文化財のうち極めて優秀で、かつ、文化史的意義の特に深いもの

 

 

 ①各時代・・・前述しました。建築史独自の時代区分、呼称を設定すべきと提案しました。

 

 ②類型・・・・前述の「特定の分野」と同意語かもしれません。もう少し検討が必要です。

 

 ③典型・・・・この語句の使い方について、定量的な評価の可能性を検討します。

 

 ④文化史的意義・・・文化史とは何か?検討します。

 

 そして、(一) 意匠的に優秀なもの (二)技術的に優秀なもの  (三) 歴史的価値の高いもの

     (四) 学術的価値の高いもの (五) 流派的又は地方的特色において顕著なもの

 についても、検討します。

 「優秀・価値が高い・顕著」は評価基準で、具体的、定量的な評価基準に換言しにくいのです。

 

 本来なら、「指定基準の細則」があり、極力、定量的に細分化したルールがあるべきなのですが。

 

 

1、指定基準の語句の検討

  

② 類型  

 ・デジタル大辞泉

 1 似ている型。「―の多い説話」

 2 幾つかのものに共通する基本的な性質や特徴。「犯罪を―によって分類する」「―化」 

  同意語  類・タイプ・形態・様式・種・型・種類・部類・ジャンル・毛色

 

③ 典型

  理想の事例  概念を完璧に体現したもの 

  同意語  極致 基本形  プロトタイプ  モデル 好例

  好例   事例のうち最も顕著なもの 極み ・ 骨頂 ・ 最たるもの ・ 端的な例 ・ 極端な例  

       代表的存在 ・ 好例 ・ 代表例 ・最たる例 

 

  ④ 文化史的意義

   国宝指定は「重要文化財のうち極めて優秀で、かつ、文化史的意義の特に深いもの」とされています。

   文化史的意義の特に深いものこれも抽象的な語句です。

 

   文化史というものが存在しているのか?  

   ●デジタル大辞泉の解説【文化史】

    学問・芸術・文学・思想・宗教・風俗・制度など、人間の文化的活動の所産について包括的に記述

    した歴史。政治史・経済史などと区別していう。

 

   ● wiki    内容的に理解できません。

 

   「文化史」の日本史での位置づけは明解に確立はされていないようで、大学のカリキュラムでも数校

   が設定しているだけです。一般的(学問ではなく)に文化の歴史というなら理解できます。

 

   それなら「日本歴史の中で文化的に意義深い」でもよいわけですが、どうも言葉の遊びが好きな文科

   省の方が昭和26年におられたようです。(意義深さ=大きな価値・重要)

   又、何故「日本建築史において意義の特に深い」ではないのか? 

 

   指定基準の改訂はこれもパワーと時間がかかることですが、細則を制定する程度は努力するべきだと

   思います。文化庁文化財審議会は、「指定理由策定要領」程度は検討してください。

 

 

 

2、最近の指定理由の定性的語句の検討

   

   「指定理由策定要領」の策定のためには、語句を整備することが基本と考えます。

   最近の指定理由の解説文に採用されている語句を整理してみました。

 

            表ー6 最近の指定理由の「定性的語句」の検討案

 

定性的理由

定量的になるか検討

類似語句・対応

⑤画期

時期・時代分割

初期

中期

後期

晩期

当初

時期・始終

最初

中間

最後(終)

 

変遷・過度・初例

完成度(期)

草創・原点

習熟・成熟

完成・到達

 

確立・発展・経過

⑥形容

定量的

唯一・無二

類型が1例(二つとない)

 

例を見ない

希少

類型が2~3例

 

殆ど、稀である

屈指

類型の中で、極めて優秀で5指以内

 

 

貴重

の中で、極めて大切で5例以内

 

少ない

代表

類型全体の中から優秀なものを選定する

 5例以内

典型

類型の中で、その特徴を最もよく表している

 5例以内

⑦形容

定性的

優秀

意匠的に

中心・核

象徴

・語句はいくらでもある。

・理由の語句で採用すべきも
 の
を限定する

・採用する規範を作成

・指定理由記述マニュアルが
 必要です。

価値

高い

正統

規範

水準

高い

集大成

発揮

重要(度)

高い

洗練

特徴

高い・良い

原点

顕著

技巧

高い・駆使

高度

繊細

⑧規模

定量

規模

大規模

類例の中で面積が大きい。500㎡以上

五間五間以上大建築

中規模

類例の中で一般的面積  100㎡以上

三間三間程度

小規模

類例に中で面積が小さい。100㎡未満

三間三間以下

極小

厨子、小塔、模型等

 

高さ、長さ

 

高い、長い、最高、最長

容量・体積

 

 

 理由となる語句を整理し類型化し、活用する意味を明解にしたマニュアルが必要と思います。

 

 指定理由の内容は公正性、透明性、があることが基本であり、個人の思惑、感性、言語力の差異は不要で

 あり、ある程度、検閲する機能が審議会にあってもよいのではないでしょうか。

 

 もう一度総務省の指摘を掲載します。

 

 「文化財の保護に関する行政評価・監視」    総務省行政評価局 平成16年11月

  【P-7抜粋】

文部科学省は、重要文化財等の指定又は指定の解除において、透明性、公正性を確保し、その一層の適

切化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。

 ① 重要文化財等の指定又は指定の解除の理由を整理し類型化することにより、各々の文化財の特性に対応

した重要文化財等の指定又は指定の解除についての文化審議会への諮問対象候補に係る情報の提供に関

する指針を策定し、これを関係者に周知徹底すること。

 ② 地方公共団体から文化庁に対する意見具申制度の枠組みの中に、この指針による指定又は指定の解除の

  候補に係る情報を提供できる仕組みを設け、これを関係者に周知徹底すること。

 

「情報の提供に関する指針」とは、指定基準で指定推薦する理由(情報)の策定する指針です。

 

これを制定、活用し、必須項目を適格に記述文書化し、個人的ばらつき、内容の不明解さを解消し、透

明性、公正性、適切化を図るものです。

 

       (今までないのが不思議、企業とは違う、誰のため?責任は無い?)

 

 

 

3、指定理由の語句活用例

 

指定理由の策定は、現状、調査委員個人の作文スキルにより「バラツク」ことは明白であります。

これを、標準化しあるレベルまでは、客観性の高い評価の理由が選定され、そして、その文化財独自の

特性評価が付加されてくる際に、個人的見解が、ある程度加味されてくることは認知されるべきです。

 

● 国宝 円覚寺舎利殿の事例検討

 

 文化庁DBから引用

・解説文: 

  円覚寺は、弘安5年(1282)に北条時宗によって創建された寺で、舎利殿は室町時代中頃に建立され

 た物と考えられている。禅宗とともに伝来した宋の建築様式・唐様を採用した仏堂として日本最古のも

 のであり、かつ最も純粋な姿を示すものである。

 (下記、詳細解説とも相違し、室町中期、日本最古とも間違い、そして移築・・・修正します?)

 

 ・詳細解説:

  円覚寺開山塔頭の正続院に・・・・建築様式の説明が縷々と続く  ・・・・禅宗様の特色を示す。

 円覚寺舎利殿は旧太平寺仏殿としての高い由緒が明確であり、室町前期の正統的な中規模禅宗様仏殿

 の典型である。【引用文献】『国宝大辞典(五)建造物』(講談社 一九八五年)  

 

 

       表ー7 円覚寺舎利殿での選定理由の検討と文化庁詳細解説との比較

選定基準の特性

円覚寺舎利殿特性

指定理由

確証

文化庁 詳細解説文

① 特定の時代で

室町時代

× 最古ではない

 

 室町時代

   画期

前期

× 代表ではない

 

 前期

② 特定の地方で

東海地方・神奈川

× 類型全国に

 

 

③ 特定の分野で

唐様仏殿様式

○ 様式の典型

比較表

 禅宗様仏殿

④ 特定の技術で

詰組に精緻な技巧

△ 類型同レベル

 

 

⑤ 形容詞定量的

典型・屈指

 

 典型

⑥ 形容詞定性的

(意匠的)に優秀

○ 屈指に入る 

比較表

 正統的な

⑦ 規模定量

中規模

△ 類型同レベル

 

 中規模

 

 

 

該当

 

(一) 意匠的に優秀なもの

○ 類型で屈指

 

(二) 技術的に優秀なもの

△ 類型同レベル

 

(三) 歴史的価値の高いもの

△ 類型同レベル

 

(四) 学術的価値の高いもの

△ 類型同レベル

 

(五) 流派的又は地方的特色顕著

× ない

 

㈠から㈤で、かつ各時代又は類型の典型

○ 類型の典型

正統的と典型は同意語?

重要文化財のうち、極めて優秀で・・・

極めてとは言えない

国宝と評価しますか?

 

選定理由は、「禅宗様仏殿の典型で、その意匠的な優秀さは屈指である」が正解ではないでしょうか?  

     

「室町前期の正統的な中規模禅宗様仏殿の典型である」は修飾語が多いのです。アンダーラインだけが

選定理由で、「正統的・・」が㈠~㈤のどれに該当するか、「学術的・・」なのか?判断できず。

 

選定基準に合致した理由を明確に記述すればよく、文化庁の詳細説明は、円覚寺舎利殿パンフレットに

記載すべき内容で、まさに解説です。

 

「この文化財は○○の理由により国指定○○文化財とします。」という追記をお願いしたいと思います。

 

 

 

4、指定基準㈠~㈤の定量的評価の検討

 

① 「・・・優秀」「・・・価値の高い」「・・・顕著」の定量化

 

 ㈠~㈤の定量的評価は、困難です。そこで主観的にならないように 審議会委員、部会委員数名によ

 る合議、5段階評価等によって客観性を高めるべきである。

 

           表ー8 指定基準の項目決定について

指定基準

類型の比較の資料

客観的な評価

(一) 意匠的に優秀なもの

・特定の類型の比較表・

 写真・図面等の比較資料

・審議会委員、部会委員による

・合議による評価を基本とする

 

・個人の主観的判断ではないこ

 とを全委員が確認する

 

・選定理由も合議し付記する。

 

・5段階評価等により定量的に

 判定する等の検討

(二) 技術的に優秀なもの

・特定の技術の比較表・

 写真・図面等の比較資料

(三) 歴史的価値の高いもの

・日本史的な出来事と関連資料

・文化史的評価と関連検討資料

・建築史的に重要な特性

 についての価値の評価資料

(四) 学術的価値の高いもの

・建築史学で重要な特性を

 保持していることの資料

・その類型の比較資料

(五) 流派的又は地方的特色顕著

・仏教、神道各派ごとの

 類型資料

・各地方特色の類型資料 

 

 

個人的、主観的評価は避けるべきで、担当委員の合議評価を基本とすべきと思います。

意見が分かれた場合は選定しない等のルールを設定し、その評価過程を公開することも必要です。

 


 

 

追記ですが、

5、選定基準の条文の文化庁の取り扱い

  

  文化庁HP国指定文化財DBには、指定基準の理由となる ㈠~㈤の付記が文化財ごとにあります。

  しかし、すべてに記されているかというと、そうではありません。

 

   建造物の国宝、重要文化財(2016年8月2,456件)はこのDBには2,444件記載されています。

   その内、明解に指定理由として記載されているのは、

 

    (一) 意匠的に優秀なもの・・・116件

    (二)技術的に優秀なもの・・・ 33件 

    (三) 歴史的価値の高いもの・・・88件 

    (四) 学術的価値の高いもの・・・ 6件

    (五) 流派的又は地方的特色において顕著なもの・・・76件

    国宝(重要文化財のうち、極めて優秀で・・・)・・・1件(中尊寺金色堂のみ)

 

                 合計 320件です。僅か13%

 

   文化庁HP国指定文化財DBでは、指定基準に合致しているか否かの記載が87%ないのです。

    

   また、このDBには、「解説文」又は「詳細説明」(大半が書籍の転記)に選定理由が記述されてい

   るものがあります。

   

   建造物の国宝、重要文化財の「詳細説明」は186件に記述されています。「解説文」は324件です。

   重複していますので単純に合算できませんが、500件としても20%の記述率です。少ない!

 

   この解説が付記されたものは大半、近年指定された文化財です。旧国宝は殆ど記載されていません。

 

   ちなみに、現在の国指定史跡は、1688件、特別史跡61件、DBに記載されています。 

   「解説文」107件、「詳細説明」956件、約1000件は60%の記載率です。(多いとは言えないが)

   そして、詳細の説明文が「長文」で記載されています。指定基準はすべて記載されているようです。

 

   考古学の調査委員、審議会委員の活動は、建築史学の委員と格段の差がある様です。

   建築史学のスタッフは忙しくて見直し、追記する暇がないぐらい、新規指定に全力投球なのでしょう。

 

「国宝・重要文化財指定基準」に明確に対応する姿勢は、文化審議会の第二専門部会には欠落している

と言わざるを得ません。他の部会から遅れています! 

 

「国宝・重要文化財指定基準」自体の見直しも必要ではないかと思いますが、
  まずは、「指定理由マニュアル
」の策定が必須ではないですか。

 

  

 

 

次に、「文化財指定のために評価すべき事項」について検討します。

 

 

 

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